新型コロナウイルスとの戦い
新型コロナウイルスが世間に蔓延し、他施設ではクラスターが発生が多発していた中、当施設は幸運にも何
とかクラスターは無く乗り切っていた。しかしこの度、第7波がピークに達した2022/8/1、あり得るとは思って
いたものの、エルサ上尾の4階フロアに感染者が発生した。最初は同室の3名であったが、2日後には別室の1名、
さらに2日後には4名と増えていった。8/10の1名を最後に計13名の入所者様が感染したが、以後の発生は食いとどめた。
感染者は当然直ちに隔離されるが、同室者や食席で隣の人も濃厚接触者として別に隔離するため、フロア全体50名の内、
20名が隔離対応となった。隔離は当初は4人部屋で2部屋で行っていたが、すぐスペースが足りなくなったことと、
たまたま認知症フロアであったため終始目が離せない方も多く、限られたスタッフで対処せざるを得なかったため、食堂や
レクリエーション室の大きなスペースをビニールカーテンで仕切り、ベッドを運び込み換気に気を配りながら管理した。
高齢者は重症化するリスクが高い一方、重症化しても医療機関への搬送は世の中の蔓延状況から容易ではない。
今回、実際にあった一例だが、発症が確認されたその日に酸素飽和度が低下し酸素投与が必要になった。
しかし、救急要請したところ搬送先がないと断られた。その為ご家族には当施設で出来るだけの治療はするが
万が一の覚悟もしていただきたいとまで説明せざるを得なかった。たまたま翌日、さらに下血症状もみられたことから
搬送順位が上がったのか入院できることになった。また、高齢者施設なので、感染すると食欲が落ちたり、嚥下機能が
低下し食べられなくなる方が多く、点滴治療が必要となる場合がほとんどであった。
感染は利用者様だけでなく、職員にも及んだ。老健では体をはって密に接して介護する必要があり、感染防御の
対応をしながらも職員が次々と感染した。感染発生から5日目頃には同フロア職員のみだけでは勤務ローテーション
を回すことが出来なくなってった。また、隔離エリアで勤務をしていた職員のみならず、現場の環境整備に追われていた
事務職員やリハビリ職員、その他の職員も疲れていた。いつ終息するか、自分も感染するのではないかと
不安と疲労の戦いを続け心も体も限界を感じ始めた時、思いがけない希望の光が差した。
他部署の職員らが次々と、自らの感染リスクを顧みず、隔離フロアでのハードな勤務を申し出てくれたのである。
この職種を超えての献身的な行動にどれだけ全員が励まされたことか。「自分はこの施設の職員で本当に良かった」
と心から思えたと後日、隔離現場の職員が語っている。
大変だった感染対応も8月20日にようやく収束した。最終的に利用者様13名、職員9名が感染した。
内、入院した1名の利用者様は元気になり既に当施設に戻ってきた。感染した全員が感染症に打ち勝ち
元気に過ごしている。
これまで当施設ではここまでしなくても・・・と思うほど徹底して感染対策を行ってきた。日頃から感染対策
についての勉強会を開いたり、週2回の抗原検査を全職員に行ったり、ワクチン接種を3,4回と施工し、県からは
新型コロナウイルス感染対策の優良施設認定も受けていた。それでもウイルスは侵入し、利用者様を苦しめ、
職員も感染し施設を混乱に陥れた。もちろん、今のオミクロン株は感染力が強いだけでなく、無症状の人も多く、
発症する前から感染させるリスクがあるなど防ぎきれない面がある。従って感染ルートも不明なことが多い。
かといって、我々は諦めるわけではなく、今回の経験を貴重なものとして無駄にせず、今後の感染対策に役立てて
いきたいと考えている。当然かもしれないが、机上で考えていた対策と現実はやはり乖離があること、さらに今回は
認知障害や行動が予測しがたい利用者も多く目が離せない状況が管理を複雑にした。既に第1回の反省会が開かれたが、
現場で携わった職員から多くの貴重な意見を聞くことが出来た。今後どう対策すべきかさらに深く検討することになっている。
また、明日にでも新たな感染者が発生するかもしれないのだから。
最後に・・・
辛く疲れ果てていた時、風向きを変えてくれたのは
当施設の職員が自主的に献身的に協力体制をとってくれた行動であった。施設長も休日返上で利用者様の
治療と管理に携わり、施設職員全員が一致団結して乗り越えた新型コロナとの闘いであった。
そして、面会も出来ず報告だけで不安を抱えられていた入所者のご家族様にも、我々を信頼して見守って
いただいたことに感謝申し上げ、筆を擱きたい。
<感染対応の一場面>